こんがりマシマロ丼

蕩けて胃もたれ

【ネタバレ有】ホルガは異常なカルト村なのか?【ミッドサマー感想・考察】

ディレクターズカット版を観てからあまりに緻密に作り込まれたこの映画への愛が止まらないんですよね、どうしましょうね。

 

あらすじは前回の記事をご参考くださいまし。(ネタバレ有です)

mplv.hatenadiary.com

 

ディレクターズカット版の内容込みのネタバレマシマシで展開していく予定なのでまだ本編をご覧になられていない方で、本作の内容を知りたくない方・結末を知りたくない方は閲覧をお控えくださいませ。

 

 

さて感想・考察といってもどこから始めればいいのやら…

自分のあらすじを参考に(笑)、一つずつ片っ端から感想と共に思った事を書いてみます。

 

壁画とかはもう割愛な、他の人書いてるから。あんまり画像拾いたくないので…。

 

だいたい、

・主人公サイドの人物、人間関係

・映画開始直後のタペストリ

・ダニーの親子の死

・部屋に飾ってあるものたち

・バッドトリップ

・ラブストーリーのタペストリ

・食卓と服とルーン文字

・ホルガと「9」、北欧神話

・儀式

・9人の生贄

・共感・同調

・ホルガ特有のジェスチャー

夏至祭の終わりは?

・結局黒幕は存在するのか?

・ミッドサマーは洗脳映画なのか?

この辺を書いていこうと思います。 (続々浮かぶためどんどん追記中…)

 

【ミッドサマー感想・考察:人物編(主人公サイドのみ)】

・ダニー

まぎれもない本作の主人公。ちょっぴりメンヘラちゃん。心理学を学んでいるがゆえになんか神経質になっちゃうのってちょっとわかる気がします。パニックになりかけてるとき、パニックを抑えるために必死に呼吸するとき、なんだかとてもリアルで生々しくて、何ならこっちもつられてパニックになりそうでした。

心理学の知識があるからこそ妹のことが心配で、でも結局最悪の事態になって。彼氏のクリスチャンもなんか頼りないというか優柔不断が過ぎる。「ほんとに私のこと好きなの?」って聞きたくなっちゃうんじゃないのか、と考えながら観ていたけれど、案の定ディレクターズカット版では「もう愛していないのね、なんて言ってましたし。リアル。

 

個人的には演じていたフローレンス・ピューがとっても「ふつう」な女性を演じていたのが素晴らしかったと思います。

ダニーがめちゃくちゃグラマーでセクシーだったり、ハイパーかわいくてきゃぴきゃぴしていたらここまで刺さらなかったような。声がキンキンしていないのもとても良い。泣き方も激しくて良い。何から何までよかったですね。

何かとダニーのアップが多かったような気もしますが、そのたびにビシッと表情を決めてくれるのがとてもよかった、感服です。別作品も観たい…。

 

・クリスチャン

観客がダニーにより入り込むためにもクリスチャンは「なんかいけ好かない」と思われるように描く必要があったんだと思います。それにしたって考え無しのどうしようもない男だなと思いましたね。ジョシュが夏至祭の論文を一生懸命書いてるって知っているのに自分も書くって言いだしたり、本当に行き当たりばったりの人間。ディレクターズカット版の喧嘩や言い合いのシーンなんかもクズムーブばっかりで本当に同情できない。

それはそうとクリスチャン役のジャック・レイナーってシング・ストリートのお兄ちゃんだったんですね。なんか見たことある気がしてたけど調べるまで思い出せず…。

 

・ジョシュ

真面目に論文を書こうとしているのはいいけれど、ジョシュは研究者失格ですね。

私事なんですが、自分もバイオ系の研究をしておりまして。フィールドワークはわからないけれど、研究者にだってタブーはある。

写真を撮ってはいけないなら写真は撮ってはいけないと思うし。特に独自の文化なんてなおさら。企業秘密があるんだったら文化にも秘密はあるでしょうに。写真に残したい気持ちはわかるけれど写真を撮らないで伝えるというのもまた研究者の仕事であると考えています。何よりジョシュは研究のこと以外どうでもいいっていう感じでなんでこの人たちが仲良しグループとしてつるんでいるのか意味が分からなかったです。

よくよく考えてジョシュの死体の口には紙が突っ込まれていましたがあれはなくなったルビ・ラダーの19巻なのでは…?もう一回チェックしないと。

 

・マーク

アホ。もう本当にこいつはアホ。マークだけ精神年齢中学生以下なのはいったいどうして?と思うほどにアホでしたね。トリップすることと女のことしか考えてない…。

いつも吸ってるのはvapeみたいなやつなのかな?それともポータブル葉っぱ?わからん。

でもきっと友達に一人いたら憎めないやつって感じなんだと思います。まあ、アホすぎて皮剥がれ中に藁を詰められて、ピエロの格好させられちゃうんですけれども。

 

・ペレ

実際ペレが黒幕なんじゃない?って説もあるけれど、ペレもある意味被害者ってことになるんだろうなあとぼんやり思います。そもそも両親焼死って、もしかしなくても夏至祭4日目の生贄になったんじゃないの?って。

ペレに関しては「もともとホルガに生まれてホルガ側の生贄として両親が死んだ」のか、「ダニー同様家族旅行か何かでホルガに行った結果外部側の生贄として両親が死に、ホルガの民になった」のか、わからないし多分本人ももうわかってなさそうですよね。

それにしたって夏至祭に友達誘うとしてそれぞれの写真送りつけたりするものなのかなあ…まあ確かに親戚がいるところに友達連れて旅行するとき「こんな子」って軽い気持ちで写真見せることはあるだろうが…うさん臭く感じてしまう。

前者だった場合は「ホルガの民としての宿命」のようなものを感じてダニー達を盲目的に誘ったんだろうし、後者だった場合はそれに「ダニーへの強い同情」が付け足されて完全なる善意でダニーを誘ったことになりそう。後者の方が洗脳されてる感強くて怖い。

最後のシーンで泣きわめくペレの顔はマジだったけど、仮にも自分の同期たちや弟分が死んだり火あぶりにされたりってふつうそんな泣き方で済まなくない?と思ったりむしろ泣けなくない?と思ったり。

 

【ミッドサマー感想・考察:人間関係編(主人公サイドのみ)】

・クリスチャンとダニー

付き合って4年と2週間だってダニーが覚えてるのにクリスチャンは3年半だと。3年半ってなるとちょうどダニーの両親と妹が死んだ時期。その時にはすでに「1年前から別れたがっていただろ」なんてマークに言われているし、クリスチャンの中ではその時からもう別れてるつもりだったんでしょう…。クリスチャンは別れたいけど、でも悪者になりたくなくって別れられないんだろうなあ。たとえそのダニーと別れられない理由が「家族が死んでかわいそうだから」だったらマジでメンヘラを生み出すタイプの無責任な優しさってやつだ。ダニーはダニーで迷惑だとわかってるけどクリスチャンに依存しちゃうのをやめられないんだろうなあ。リアルにこういうカップルいっぱいいると思う。

別れようと思って別れられるカップルはきっと少ないんでしょう…惰性で付き合ってるカップルがすべて破局したらこの世の中どうなるんでしょうね…。

なんだかんだ男女関係って男性≧女性くらいの気持ちがあったほうがうまくいきますよね。閑話休題

 

・サイモンとコニー

割とさらっと死んじゃってるけど一応はクリスチャンとダニーの惰性で付き合ってる状態との対比として登場したんだろうなあと思います。婚約して実際いつもべたべたラブラブ~な感じで。ダニーはそれを見てまた不安になったりしちゃって。

それはそうとよくよく見るとコニーは川のシーン(*ディレクターズカット版)にいるんですよね。サイモンはいないけど。次の日に置いていかれる(ってのは嘘だったけど)ってことは「僕はもういい」とかなんとか言っていかなかったのかなあ。そしたらコニーもいかなそうだけどなんでいるんだろう。とちょっと気になる。

  

・クリスチャンとジョシュ、マーク、ペレ

博士課程の同期だってこと以外の共通項なさそうっていうか、ここまで惰性っぽい交友関係ある?付き合い長い友達でそんな感じの人いるからわからなくもないけどこりゃあひどすぎる。

彼女を紹介しているくらいだしある程度仲良しではあると思うんだけど。大麻樹脂やったりマッシュルーム食べたり、どちらかというと「一緒に悪さする仲間」って感じなんでしょうか。

そう考えるとクリスチャンって優柔不断だから、断る理由にダニーのことあげてそうだし、ダニーダニー言い続けてそうだし、クリスチャンの方がよっぽどめんどくさい女感ありそうな気すらしてきますね。

それにしたって友達に論文テーマ寄せていってあわよくば横取りを狙うみたいなのはちょっとナンセンスすぎるし本当にどうかと思う。

 

 【ミッドサマー感想・考察:映画開始直後のタペストリー】

まあなんかみんな考察してるからあんまりいうこともないと思うんですけど、映画が始まるぞ~というタイミングで画面いっぱいに映し出されるあのタペストリー、あれはダニーの家族の死からメイ・ポール・ダンスの流れまでがざっくりと描写されています。

 

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左から順に、

*1 ダニーの家族が死に(ダニーだけはチューブから切り離されて生きている)、

*2 悲しむダニーを慰めるクリスチャン(記の上からペレが恵を書きながら見守っている)、

*3 笛を吹くペレに連れられるマーク、ジョシュ、クリスチャン、ダニー、

*4 ホルガに到着し、歓迎されるダニー一行、

*5 太陽の下で行われるメイ・ポール・ダンス…

を示しているようにしか見えませんよね。

*1 左端の2羽のカラス(?)はフギンとムニンだなんて言われていますね。フギンは「思考」、ムニンは「記憶」…北欧神話の主神であるオーディンに付き添うワタリガラスです。ダニーのみに起こった悲劇を誰かに伝えに行くんでしょう…ペレとかに。

*2 木の上のペレの近くにいる鳥はグリム童話の「3羽の小鳥」とかでしょうか。すごくざっくりいうと捨てられた王の子の所在を歌い上げるんです、鳥たちが。それでいくと女王(メイ・クイーン)の所在を歌い上げる鳥って感じでしょう。

*3 笛を吹くペレはさながらハーメルンの笛吹です。マークは道化師(Fool)の帽子をかぶり、ジョシュは本(論文)を持っています。クリスチャンは手ぶらでダニーもおずおずついていく感じ。

*4 太陽の門をくぐり、盃と髑髏を差し出される一行。左端の絵からするに髑髏は死の象徴といったところでしょうか。崖(アッテストゥパン)と羽が生えた二人(ダンとイルヴァ)は儀式を示しているように見えますね。

*5 最後、右端。大きな太陽の下でメイ・ポールの周りを女性たちが回っています。その下では食卓の準備が。女王≪メイ・クイーン≫が選ばれる流れの絵ですね。

こんな感じで映画開始0秒でネタバレというネタバレ嫌いを瞬殺する仕様になっているのが後になってわかるのが趣深いですね…。

 

【ミッドサマー感想・考察:ダニーの家族の死】

1回目はあまり気づかなかったけど、2回目観たときはしっかり序盤の家に電話しているシーンでシューシューガスの音してるんですよね。気づいたときはぞわぞわしました。

あとはお父さんとお母さんの枕元にある写真の中にダニーが花冠みたいなのをしている1枚があるのが印象的。本当にぼやっと一瞬しか映らないけど。

 

【ミッドサマー感想・考察:部屋に飾ってあるものたち】

 前述のダニーの両親の寝室の写真をはじめとした、部屋に飾ってあるものが後々の伏線になっているのがこの映画が緻密に作り込まれているなと感じるところですね。

両親が死んでからダニーが寝ている(寝れてない)部屋にある熊と王冠をかぶった少女の絵は最後の儀式のシーンを示しているし、ダニーが泣き崩れていたソファーのある部屋?には大きな魚(?)の絵があったりして。この魚(仮)の絵は爆速ネタバレタペストリーを描いた方と同じ方が描いているようです。

「変態のためのオズの魔法使い」と監督本人が言っているだけあり、かかしのオブジェ?があるらしいんだけれど確認できていないです。ほかの人のネタバレ記事でチェックしてください…(丸投げ)

 

【ミッドサマー感想・考察:バッドトリップ】

作中ではダニーがバッドトリップします。果たしてそのバッドトリップが偶然なのか、作為的なものなのか、気になるところですよね。

私は正直作為的なものもあったんじゃないかと思うんです。…初めからダニーをホルガに引き込むつもりなのであれば、ですけど。

一番初めに、村の前についたときダニーたちはイングマールにマッシュルームを勧められますが、このときクリスチャンたちがマッシュルームを食べた中、ダニーだけはマッシュルームティーをもらって飲んでるんですよね。それも、「マッシュルームに抵抗があるならマッシュルームティーもあるけど…」みたいなイングマールの提案を受けて。

ん~うさんくさいな~どうなんだろうな~っという感じ。

それはそうとして、ダンスの前に飲んでたのも絶対何かしらトリップするような成分があるお茶だろうなあと思う。そうじゃなきゃみんなあんなににこにこウフフってなりながら踊らんやろ。絶対しんどいよあれ。

クリスチャンが飲まされたのとダニーたち女の子が飲まされたものとは同じかはわからないけど、ダニーたちが飲んだものに精力剤的なものが足されてそう。なんとなく。

バッドトリップではないけどメイ・ポール・ダンスのあとの画面のぐにゃぐにゃはしんどかったですね。画面酔いしそうでした。

ダニーが丸い台(?)に乗せられて運ばれているシーンで背後の樹がチューブにつながった妹になっているのでまた見る人は注意深く見てみてください。

 

【ミッドサマー感想・考察:ラブストーリーのタペストリー】

宿舎に案内されるタイミングでイングマール、サイモン、コニーたちが目の当たりにするラブストーリーのタペストリー。

これはこれでマヤがクリスチャンにこの後することが描かれていて、まあ何ともわかりやすい伏線になっています。もはや伏してない。

ただ個人的に気になっちゃうのが、「そんなに都合よく経血手に入る?」っていうのと、「生理中だったらセックスしても妊娠する確率低くない?」っていう野暮なこと。

クリスチャンのペニスが血まみれだったのも処女の血なのか生理の血なのかもはやわからんし…。まあいろんな粉薬とか塗り薬とかあるからその辺うまくコントロールできるんでしょうか?それとも混入したのは経血ではなくてマジで切って出た血…とか?

あるいはヘパリンみたいな血液凝固を防ぐ薬品と合わせて保存しているとか?…ちょっと考えたくないですが。

 

【ミッドサマー感想・考察:食卓と服とルーン文字

 何度か食事のシーンが出てきますが、その時の食卓の並び方が常にルーン文字になっています。メイ・ポールの〇の中にもあるし、建物にもあしらわれているし、アッテストゥパンの石碑にも。初めにマヤがいた小屋の扉にもありましたね。あとはダニーやクリスチャンが着た服とかにも刺繍がされていますね。他は埋められたジョシュの足の裏か。

調べられる範囲でちょっと羅列してみます。

・食卓①最初の食事のシーン(ディレクターズカット版)

ᚱ raidō:乗り物、導き、旅、進展

最初の最初、村についた時の食事。みんな地べたに座ってピクニックのようです。

ダニーたちが旅してきたのか、これからの行く末を示唆されているのか…。

 

・食卓②アッテストゥパンの前

ᛟ Ōþalan:領土、継承、伝統、家族

ホルガが大切にしている土地や文化、名前、輪廻転生して受け継がれる命…そんなところでしょうか?アッテストゥパンも伝統だとシヴが言っていましたね。

 

・食卓③マークが連れていかれる前

ᛈ Perþō?:秘密、勝負、運を天に任せる

全体の引きでの映像がないので確証は持てませんが、「食卓はルーン文字の形に並べられる」のであれば要所要所からこれかなと判断しました。

マークの運が天に任されたのか?それともマヤの恋路の勝負でしょうか。あるいはマヤがクリスチャンに抱いた秘密の想い?

 

・食卓④女王≪メイ・クイーン≫が決まった直後

ᛁ Isaz:氷、準備、停滞、犠牲

ダニーが女王≪メイ・クイーン≫として端っこに座った時のやつですね。

この時からダニーは家族として迎え入れられ、クリスチャンとはだんだんと話さなくなっていきます。それまでは隣り合わせで座っていたけれど今回は全然離れているし。ダニーの心が氷のように冷えていったのか、これからの犠牲の暗喩か、それとも儀式の準備?

 

・メイ・ポール

ᚠ Fehu:家畜、富、財産、所有

ᚱ raidō:乗り物、導き、旅、進展

向かって左の〇にᚠ、右の〇にᚱがあしらわれていました。

富と今後の進展を願って建てられているのでしょうか。メイ・ポールは男根の象徴という解釈もありますが、そういった意味合いも含めるとよりそういう祈願の色が強く感じられますよね。

 

・小屋の扉

だいぶ初めのシーンでマヤが髪を結っていますが、そこから出て扉を閉めたときにチョークで書かれたルーン文字がありますね。

アッテストゥパンの石碑みたいに、複数のルーン文字で構成されていますが、

おぼろげな記憶だけど確か

ᛏ Tēwaz:戦士、勝利、積極性、根性

ᛉ Algiz:友、保護、助け、記憶

ᛚ Laguz:水、感情の動き、優しさ

あたりの組み合わせ。ᛏが一番多く書かれていた気がする。

ᛏはトール、北欧神話で有名な軍人を示すそうです。積極的にクリスチャンを落とすぞ~的なお願いなんでしょうか?

 

 

・アッテストゥパンの石碑

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CMでもとんでもない存在感を放っていたこの石碑。

書いてあるルーン文字は、

ᚷ Geƀō:贈り物、愛、相愛、才能

ᛉ Algiz:友、保護、助け、記憶

ᚱ raidō:乗り物、導き、旅、進展

ᛏ Tēwaz:戦士、勝利、積極性、根性

ᛈ Perþō:秘密、勝負、運を天に任せる

左下のはᚷ Geƀōなのかᚾ Nauđizなのか悩ましい…。

ちなみに

ᚾ Nauđiz:宿命、苦悩、束縛

です。

ホルガから神への贈り物であることは確かですね。

ᚱが書いてあるのは輪廻転生の旅という意味合いかもしれません。岩の上に落ちることができるかは運を天に任せる…?なかなか解釈が難しいですね。

 

ちなみに、ダンとイルヴァの服にも何やら書いてある気がするんだけれど解読できないっす!ごめん!(断念)

 

・ダニーの服

ᚱ raidō:乗り物、導き、旅、進展

ᛞ Dagaz:人生、輪廻、突破

ひっくり返されて書かれているので意味合いは逆になるといったところでしょうか。タロットカードみたいですね。

進展の逆ってことはなんかもうそこで頓挫するというか、終わっちゃうというか。

ᛞはひっくり返っても形が変わらないので意味が変わらず、そしてそれを突破する、と。クリスチャンとの不和を突破していくみたいな意味がありそう。

*ᛞには純潔という解釈もあるようですが付け焼刃の知識ではよくわかりませんね…もう少し勉強します。 

 

・クリスチャンの服

ᛏ Tēwaz:戦士、勝利、積極性、根性

ᛉ Algiz:友、保護、助け、記憶

刺繍のデザインとしてはᛏをᛉがかこっている絵柄と、ᛉをᛏがかこっている絵柄の2つ。

儀式へのやる気(ヤる気)たっぷりで頑張ってね~!って感じか。

 

・ジョシュの足の裏

 ᛗ Mannaz:人間、人間関係、自己、平等

植物の間に埋められたジョシュの足の裏に書いてあるルーン。

論文のことであまりに利己的っていうか常識外れ(ダメって言われたのに写真を撮るとか)だったから「人間らしくせえや」という諭しなのか、はたまたただただ植物の間に埋めて「これは人間です」という皮肉なのか。わからん。

 

・シヴの家の入口・服の刺繍

ᚨ Ansuz:言葉、情報、歌、知識

さすが村の長といったところですね。言葉を発し、情報、知識を授ける。きっと祈りの歌も歌うでしょう。

 

・最後の儀式の神殿の中

神殿の中の壁に♢とXを重ねたようなマークががいくつ書かれています。

また、よく見ると下に敷かれた藁もの形をしています。

どうやらこれはグングニルを示しているようですね。

グングニルといえば北欧神話の主神であるオーディンの槍。

オーディンルーン文字の秘密を知るためにユグドラシルの樹に首を吊り、自分の体にグングニルを突き刺して9日間耐えたらしい。ド変態だな。9日間、自分を生贄にして耐えた結果、オーディンは叡智の神となったそうで。

 

【ミッドサマー感想・考察:ホルガと「9」、北欧神話

前項でオーディンの名前を出しましたが、やはりスウェーデンということだけあって北欧神話っぽいところが随所に出ますね。序盤で村人に話しかけたときに服の話を振ったらユミルがどうこうって言ってましたし。

熊はベルセルクでしょう、バーサーカーといったほうが良いか。バーサーカーって熊か狼かの姿になって鬼神のごとく、親族もそれ以外も構わず暴れまわって、その後は虚脱状態になって動けなくなったんですよね確か。クリスチャンじゃん。

作中だと、ホルガでは「9」ってすごく大事な数字なんだろうなと思いますよね。

北欧神話でいうと、ユグドラシルによって9つの世界が支えられているそうです。

スピリチュアル的な意味合いでいうと9って0~9の終わりの数字で、完結を意味するとか。

古代中国なんかだと「10」は神様の数字だから使えないからと、皇帝のいる場所では「9」をめちゃくちゃ使うって聞きました。故宮の扉とかには99個の出っ張りがついてた気がします。

9日間の饗宴

90年に1度

9の倍数である人の春夏秋冬(0~18、18~36、36~54、54~72)

石碑や扉の内側にある9つのルーン

そして9人の生贄…。

ひたすらに9を押してきますね。

 

【ミッドサマー感想・考察:儀式】

・アッテストゥパン

ホルガの生命サイクルである72歳になった老人が崖から身を投げる儀式。

アッテストゥパンは崖につけられた名前だそうですね。だからジョシュは知っていた(きちんと研究していたので)。

しかしよく見てみると、冒頭からイルヴァはずっと思いつめた顔をしているんですよね。松明を渡された時からずっと口をぎゅっと結んで。ダンはダンで心ここにあらずって感じでぽや~っとしてる。

ホルガの伝統とは言うけれど結局は受け入れられない人もいて、でも受け入れざるを得ないんでしょうね。

ハンマーでダンの顔をぐしゃっとつぶしたたすきをかけた3人はどういった基準で選ばれたのか、よくわかりませんがきっと娘・息子なり親しい友人だったり、そんなことがあっても驚きませんね…。

 

・川の儀式(ディレクターズカット版)

*湖だと思ったら海外だと川表記なので川にしました。あってるかは知らん。

川に生贄を放り込む儀式ですね。女神のためとか言ってます。

アッテストゥパンの後にウラやマヤが飾り付けをしていた樹をここで放り込みます。

そして樹の飾りつけをした少年を生贄に…と思いきや彼は生贄にはされず勇気をたたえられます。

1日の間に2回儀式があるということも考えられますが、コニーの死体が同様の樹の飾りつけをされていることから、本来この儀式は3日目に行われる予定で、その予行演習だったんじゃないかなと思います。実際に儀式がコニーで行われたのはダニーがパイを焼いていて悲鳴を聞いたころかな。

しかしコニーもよく夜の儀式見に行ったよな。アッテストゥパン見てからまた儀式あるって言われても絶対行きたがらなさそうなもんだけど。サイモンは行ってなかったみたいだし。

 

・メイ・ポール・ダンス

これは果たして儀式か?まあそのあとに儀式があるから前座みたいなものか。

トリップするお茶を飲んでみんなで踊りまくる。どんどん楽しくなってきちゃってふにゃふにゃになってスウェーデン語まで話せるようになっちゃう。

実際これでダニーが女王になったのは偶然だったと思います。何ならマヤがなってたんじゃないかなあ?とすら。当のマヤはクリスチャンがペレの横に座ったタイミングでへにゃ~っと転んで輪から抜けたわけだけど。ここからあの儀式の準備をしていたのかもね。その年の女王≪メイ・クイーン≫が外部の血を取り入れる、なんて流れもありそうなもんだけど。

 

・女王≪メイ・クイーン≫の儀式

1人の女王に馬車を引く6人、そしてなんかあと2人いて何のかんの9人だったような?(そのあと泣いてる人数見ると8人だから8人かも!)

なんとなく見た感じ皆さん「夏」である18歳~36歳の女性のように思えますね。

 

・性交

クリスチャンとマヤの性交の儀式。どちらかと言わなくてもこの儀式は「子を成すこと」だけが目的です。

部屋の中央のマヤを除くと女性は12人。合わせて13人、有名な不吉な数字です。

また、参加者は「秋」の36歳~54歳の女性のように見えます。(ディレクターズカット版だと明るいのでよく見えますがそんな感じ?けっこうおばちゃん感…)

タペストリーのところでも気になったけどマヤって処女だったのかなあ、それとも生理中?まあ生理中だと妊娠しにくいけど…でもそしたら経血はどこから?謎は深まるばかり… 

ヘレディタリーでもそうだったけどアリ・アスターって「エロくない全裸」撮るのうまい。(褒)

 

9人の生贄の儀式については次項で…

 

【ミッドサマー感想・考察:9人の生贄】

4日目だか5日目だかの儀式で9人の生贄を神殿ごと捧げるようで。

外部から4人、

内部から4人、

最後の1人は女王≪メイ・クイーン≫が選ぶ。

 

結局のところ、

外部:サイモン、コニー、マーク、ジョシュ

内部:ダン、イルヴァ、イングマール、ウルフ

女王≪メイ・クイーン≫の選択:クリスチャン

ってな感じに。

イングマールとウルフは立候補って言ってるけど結局はふさわしくないから生贄にされたんじゃないかな~と思う。

 

まあざっくり考えると、

サイモン:アッテストゥパンを否定した

コニー:アッテストゥパンを否定した

マーク:先祖の樹におしっこした(不敬)

ジョシュ:ルビ・ラダーの写真を撮った(ある種の不敬)

ダン:72歳になり生命のサイクルを終えた

イルヴァ:72歳になり生命のサイクルを終えた

イングマール:連れてきたサイモンとコニーが生贄以外のものになれなかった

ウルフ:怒りに任せて(?)マークを殺してしまった

*ディレクターズカット版よりウルフは「樹を守る人」だったようなので、「樹を守れなかった(マークがおしっこしちゃった)」ってのもあるかも?

クリスチャン:優柔不断であった、浮気をした(ダニーからすると大罪)

ってな感じでしょうね。

ウルフがマークを殺したというのは仮説ですが、ジョシュを覗き込んだのはマークの皮をかぶったウルフだと思います。

それがなかったらマークはインガと性交の儀式してたかもしれないのにね。でもインガも殺害に一枚噛んでそう。最後のほうで鼻ケガしてるの見えたから。

クリスチャンを迎え入れたマヤはとっても華やかなお化粧をしていたけど、インガも何事もなかったらそうなってたんだろうなあ。

 

死に方としては以下の通り

サイモン:≪血のワシ≫の刑。

*血のワシ:生きたまま肺を引きずり出す。その昔報復として行われていたとか…。

コニー:溺死?川の儀式にて。

マーク:不明、少なくとも顔と下半身の皮は剥がれた模様。

*下半身の皮、ネクロパンツって言って富をもたらすものらしいですね。金玉のところにお金入れとくといいっていう記述どっかで見ました。ちゃりちゃりうるさそう(下世話)。

ジョシュ:寺院で撲殺

ダン:アッテストゥパンで飛び降りたのち、顔面をハンマーでつぶされて

イルヴァ:アッテストゥパンで飛び降り、一枚岩にぶつかって

イングマール:焼死

ウルフ:焼死

クリスチャン:何らかの薬で動くことも話すこともままならぬまま焼死

 

イングマールとウルフが本当に生贄として志願したなら、あんな嘘っぱちのイチイエキスなんか舐めさせないでもっとしっかり麻痺させそうだなと思ったんだけど、逆にあえて痛みや恐怖を与えることで残されたホルガの民のつながりを強固にするためだったのかもなあ。

ちょうどいいや、次項に繋げます。

 

【ミッドサマー感想・考察:共感・同調】

ホルガではみんなで感情を共有します。

感情の共有って心理学では共有体験なんて言われますけど、例えば子供にとってはとっても大切なことだったりします。

まあ、ここにいるのは基本的に大人たちなので、こういう共有体験は「洗脳」っぽい感じがしてきますね。カルトっぽい言葉で行くと。

逆に、ダニーは自分の感情をだれにも共感してもらえてなくてつらいんですよね。厳密にいうとペレは共感を示していたけれど、ダニーはクリスチャンに共感してほしかった。クリスチャンがダニーをかわいそうに思って別れなかったのはやさしさかもしれないけど、それはクリスチャン本人を守るためのエゴ色が強いので。

ホルガの人々は、

ダンが死ねなくて脚をへし折ってつらいとき、泣きわめきました。

クリスチャンとマヤがセックスをしているとき、マヤに合わせて喘ぎました。

ダニーがクリスチャンとマヤのセックスを目撃した時、ダニーと呼吸を合わせ大泣きしました。

イングマールとウルフが焼かれて苦しんでいるとき、思い思いの苦しみを表明していました。

まあ、各所を見てみるとなんか笑っているような顔をしていたりするのですが(そこがまた不気味)、感情を共有しているんです。

感情を共有するのは気持ちいいから、それが気持ち良くて笑って泣いてるのかもしれないな…。

一人の苦しみはみんなの苦しみ、一人の快楽はみんなの快楽。

三銃士もびっくり。

でもきっと孤独なダニーにとっては何よりも「救い」だったんじゃないかなあと思うのです。少なくとも多くの観客がそう思えるように描かれているのです。恐ろしや。

 

【ミッドサマー感想・考察:ホルガ特有のジェスチャー等】

ホルガには様々な独特のジェスチャーがありました。

・息を「ほっ」と大きく吐き「はっ」と大きく吸う

CMでもおなじみのこのホルガ式呼吸法、実際にやってみると「逆深呼吸」って感じですね。案外リラックスできるのが悔しいところ。

作中ではマヤが髪を結って外に出る前、アッテストゥパンの前にダンとイルヴァが祈りの言葉(?)を捧げたき、アッテストゥパンの際シヴがルビ・ラダーを読む前後、メイ・ポール・ダンスの前にキマるお茶を飲んだ後、最後の儀式で火をつける直前の合図…その辺でこの呼吸が行われていました。

合図だったり、締めだったり、一つの節目としてメリハリをつけるためにやってそうですよね。たまにやっちゃう…。

 

・手のひらを掲げてひらひらと動かす

実際にこの解釈で合ってるかはわかりませんが、この動きは手話での拍手に当たります。

実際にこれが行われたのもメイ・ポール・ダンスで残り8人になった時なので祝福の意味合いで行われているのは間違いないかもなあなんて。

あとなんかかわいいですもんね、手をひらひらさせてるの。

 

・手のひらを前に向ける

まあこれをジェスチャーとしていいのかはわからないんですが。

ダンとイルヴァの死体が焼かれるときや最後の儀式を前にしたホルガの面々はみな手のひらを前に向けています。

人間は自分を全てさらけ出す時、本能的に手のひらを相手に見せるそうで。

手のひらを相手に見せる:「隠し事はない」「全てをさらけ出す」だとか。

まあ実際どうだかわかりませんが、それぞれの儀式について全身で誠心誠意儀式に参加してますという意思表示とも見れますね。

 

【ミッドサマー感想・考察:夏至祭の終わりは?】

劇中では4日目(5日目?)までしか描かれていないんですよね。

9日間やってるのならあとの4〜5日はなにしてんだろう?もう犠牲はなし?お祭りだけ?

6月20日夏至祭スタートしたなら6月28日までやってるはずだけど多分劇中はマジの夏至前後まで?だよね。うーん。

ダニーはどうなるんだろうって思う。

そもそも90年に一度なのは何なのか気になるしね。

アッテストゥパンはその都度行われるわけだし、女王≪メイ・クイーン≫は毎年選ばれるわけだし、そもそも夏至祭と冬至祭は毎年行われてるってペレが言ってるし。

9人の犠牲が90年に一回なのかと思ったけどそしたらペレの両親が焼死してるって情報は謎だよね。焼死って死に方にまで言及しなくていいと思うし。

謎が深まるばかりの夏至祭だ。

 

【ミッドサマー感想・考察:結局黒幕は存在するのか?】

結論から言うと黒幕はない、と思う。

しいて言うなら「カルトがやべえ」って話だけど、きっと代々受け継がれてきたのでもうみんな思考停止状態だと思うのよね。

まあ「冬」の長老たちはほかの季節の人々が疑いを抱かないように調整していく必要があるからしいて言えば長老たちかなあ。

でも本当に72歳で崖から飛び降りて死ぬことを幸せだと思ってる人もいるわけだしね、黒幕とかはもうないと思うんだよな。それがこの映画の怖いところなんじゃないかとも思うし。

 

【ミッドサマー感想・考察:ミッドサマーは洗脳映画なのか?】

ミッドサマーを見て思うのは「これはホラー映画じゃない」っていうこと。

いやまあ怖い映画ではあるけど、ホラー的な怖さじゃないっていうか。オカルト的でもないし。

グロはあってもあれはグロテスクさを表現するためのグロテスクではないし。

ウィッカーマンとか挙げられているんですけどね、私は『ジョーカー』と非常に近しいものを感じました。

 

ジョーカーは、孤独なアーサーが世の理不尽に揉まれてジョーカーになる。

ミッドサマーは、孤独になったダニーが理不尽な儀式を経てホルガの一員となる。

 

あと、ジョーカーもミッドサマーも、主人公に異常なまでにのめりこむように作られています。というかほかに同情できるキャラクターがいない。全員いけ好かないか、のめりこむほどの感情の描写がない。

ジョーカーも洗脳映画だなんて言われていたけれどそう言う意味ではミッドサマーも元気な洗脳映画だなあと考えた次第です。

正直めちゃくちゃはまってしまったというか、こういうめっちゃ考えられる作品大好きなんでずぶずぶです。カルト宗教は怖いぞ。

 

ほっはっ

 

…以上です!どんどん追記するかもしれないけど!

 

ひええ~長くなったよ今回も。

考察の皮をかぶった感想だけど、あらすじと合わせて30,000字近いのが面白すぎる。考察本とか出せるくらいじゃないか?わかんないけど。

いつも考察はしてもまとめないので、今回はまとめてみたくてしっかり書いてみたけど、自分で自分にちょっと引いてます…。

ともあれ、ここまで読んでいただきまして誠にありがとうございました。

ディレクターズカット版が全国公開されておりますのでまた観てみようと思います。

 

そして何よりミッドサマーの絶叫上映ならぬ「共感上映」をしてほしい!

私も痛みを分かち合って、悲しみを分かち合って、快楽を分かち合いたい。ドレスコードは白と花。